業務にAIを生かそうと思ったら、AIに聞くのが一番いい

 文・監修:宮本 太郎

AI活用の第一歩は、ツール選びでも勉強でもなく「AIに相談すること」。医師起業家が実務で実践している使い方を、4つの実例で紹介します。

AIを仕事に使いたいと思ったとき、最初にやるべきことは案外シンプルです。

「この仕事、AIでどう整理できる?」とAIに聞くこと。

いきなりツール比較を始めたり、「まず勉強してから」と構えたりするより、自分の業務をそのままAIにぶつけた方が早い。これは、WithDrAIを立ち上げてから強く感じていることです。私は医療・産業保健・社内実務・プロダクト設計を一人で広く回していますが、その中で何度も「まずAIに相談したから前に進んだ」という場面がありました。今回は、その実例をいくつか紹介します。

AIは「答え」より先に、「整理の仕方」をくれる

AIを使うというと、文章を書かせる、画像を作らせる、コードを書かせる、といった使い方を思い浮かべがちです。もちろんそれもありますが、実務ではその一段手前の価値が大きい。

何が論点なのか。どこから手をつけるべきなのか。自分が見落としている作業は何か。 この整理を一瞬で返してくれるのがAIです。人に相談する前の下ごしらえとしても強いし、一人で考え込んで止まる時間を減らしてくれます。

実例1:産業医面談は「面談」より「面談後」が重い

WithDrAIで実際に開発しているものの一つに、産業医面談の音声から面談記録や意見書の下書きを作る仕組みがあります。これは最初から実装ありきで始めたわけではありません。最初にAIへ投げたのは、**「産業医面談のどこが一番重くて、どこをAIに任せると自然か」**という問いでした。

すると、面談そのものより、その後の記録作成の方が時間も集中力も奪う、という構造が見えてきました。そこから「面談中はリアルタイム文字起こし → 終了後に記録のたたき台生成 → 意見書のドラフト生成 → 修正を次回以降に生かす」という流れが整理でき、単なる文字起こしツールではなく、記録の運用全体を軽くする設計へ発想を切り替えられました。作業を丸投げしたのではなく、どこをAIに任せると現場が楽になるかを、先にAIと一緒に設計したのです。

実例2:経費処理は「OCRを入れる」より「何を抜きたいか」が先

社内では、請求書やレシート処理のための経費計算ソフトも運用しています。ここでも最初は「OCRで読めたら便利そう」という雑な発想でした。

でもAIに相談すると、本当に必要なのは単なる文字起こしではなく、日付・取引先名・金額・税率・勘定科目・読み取りの信頼度といった経理で使える構造化データだと整理されます。この視点が入ると、「画像を読む」こと自体は目的ではなく、人が転記していた項目をどこまで減らせるかが本題になります。AIに聞かなければ「OCR精度を上げたい」で止まっていたはずが、本当に欲しかった「経費処理にそのまま流し込める形」にたどり着けました。

実例3:補助金や提案書は「書く」より「分解する」が先

補助金申請や事業計画書、研究提案書づくりも大きな仕事です。こういう文書は長く、要件も細かい。正面から読むと、それだけで気が重くなります。

ここでも、本文を書き始めるより先に、**「この公募で必要な書類を全部分解して、何が未着手で、誰から何を回収すべきか整理して」**とAIに聞く方が早い。提案書本体だけでなく、承諾書、調査報告書、財務資料、各種入力項目など、やることが多層に分かれているのを見える化できます。このときAIは、文章の代筆者というより、締切のある業務を見える化するプロジェクトマネージャーに近い存在です。

実例4:新規プロダクトは「思いつき」を「設計」に変える段階で効く

ベッドサイド見守りセンサーのような新規プロダクト構想も進めています。アイデア自体は人が出せても、そこから先が長い。本当に差別化になるのか、既存製品と何が違うのか、構成はどうするのか、研究価値と事業価値を両立できるのか——考えることが一気に増えます。

人が出した発想を、AIに**「競合と比べた空白地帯はどこか」「この構成で何が得か」「複数の価値をどう一つの設計にまとめるか」**と壁打ちすると、企画が一気に具体化します。AIはゼロから発明してくれるわけではありませんが、頭の中の散らかった構想を、設計図に近い形へ圧縮するのはかなり得意です。

AI導入で止まる人は、「使い道」を一人で考えすぎている

よくあるのは「うちの業務でAIって何に使えますかね」と人間同士で延々議論してしまうことです。それなら、その業務をそのままAIに説明して、**「この中で、AIに任せられる部分・整理できる部分・標準化できる部分を挙げて」**と聞いた方が早い。

AI活用を考える会議の最初の参加者は、人ではなくAIでいい。雑でもいいので現状を書き、重い作業・繰り返し作業・判断がぶれやすい作業を洗い出させる。そこから人が絞り込めばいいのです。

結論:AIを使いたいなら、まずAIに相談する

AIは、完璧な答えをくれるから便利なのではありません。考え始めるコストを下げてくれるから便利です。何から始めればいいか分からない、論点が多すぎて整理できない、一人で抱えると止まる——そういう仕事ほど、まずAIに聞いた方が前に進みます。

もし今「業務にAIを生かしたいけれど、何から始めればいいか分からない」と思っているなら、最初の一文はこれで十分です。

「今やっている業務はこれです。どこにAIを入れると一番効果がありますか?」

たぶん、そこから景色が変わります。WithDrAIは、この「最初の一歩」からご一緒します。

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